沖縄北部の大宜味村の石碑では「80(歳)はサラワラビ(童)、90(歳)となって迎えに来たら、100(歳)まで待てと追い返せ。」と記されています。
沖縄における健康の重要性は、加齢に伴う典型的な行基が沖縄、日本、アメリカそれぞれの人口10万人の代表的な都市に与える影響を検証することで評価できます。アメリカの死因第一位である冠状動脈性心疾患(CHD)では、ある都市が沖縄にあると仮定するとその都市がアメリカにある場合よりも死亡者数は男性では約3分の1、女性では約4分の1となります。これは顕著な違いです。
実際、伝統的な沖縄の食生活は伝統的な地中海式の食生活や現代のDASH食 (高血圧を防ぐ食事) のような、その他の健康な食生活と多くの共通点があります。これらの食生活では飽和脂肪が少なく、抗酸化物質の摂取量が少なく、グリセミックロードが低いため、酸化ストレスの軽減を含めた複数のメカニズムを通じて心血管疾患、一部のがん、その他の慢性疾患のリスクの低下に貢献しています。
沖縄では、低カロリーで植物栄養素が豊富で、栄養豊富な食生活、健康的な食習慣、そして運動量の多さが栄養失調となることなく自然にカロリーを制限することにつながっています。伝統的な食習慣では、少量の食事と満腹になるまで食べないことが重視されます。現在でも、沖縄の高齢者の間では腹八分(80%満腹になるまで食べる)が提唱されています。1960年代以前の沖縄人はカロリー指針で通常必要とされているより10-15%少ないカロリーしか消費していなかった、と概算しています(Willcox et al. 2007 PMID: 17986602)。慢性的なエネルギー不足に直面すると、哺乳類はよりエネルギー効率を向上させることで適応を図り、熱の発生量を減らし、食事のより大部分を使用可能なエネルギーへと変換します。その他多くの代謝適応が長寿に寄与しています。このような変化は動物を用いた「カロリー制限(CR)」試験で一般的に観察され、遺伝操作を選択する以外では唯一安定して再現可能な平均及び最大寿命の増加手段です。(Fontana et al. 2010 PMID: 20395504)。
さらに、伝統的な沖縄の食生活はCRの生物学的効果を模倣する食物の宝庫であり、カロリー制限「ミメティック」の役割を果たしています。CRミメティックは酸化ストレスの軽減を含めた複数のメカニズムを通じてカロリー制限を行う必要なくCRの生理学的利点を提供する化合物です。沖縄方言で一般的な「ヌチグスイ」という言い回しは「命の薬となるような食べ物」と翻訳できます。これは沖縄では食べ物と薬の境界があいまいであるという文化的背景を反映しており、より深く分析を行うことで沖縄の食生活の伝統的な食べ物、ハーブ、あるいは香辛料の多くに医学的特性があることが判明しており、現在この点に関する調査が進んでいます (Willcox & Willcox 2014 PMID: 24462788)。